自分の顔は実際よりも大きく見える

You're not as big-headed as you think you are - BPS Research Digest

上のふたつの絵は,いずれもゴッホを描いたもの。左はゴーギャンによるポートレートで,右はゴッホ自身による自画像。自画像の方は,右利きのはずのゴッホが左手で絵を描いているから,恐らく鏡を使ったんだろうと分かる。

このふたつの絵には,もうひとつ興味深い違いがある。それは「頭の大きさ」だ。右の自画像は,どうも左のポートレートよりも,頭が大きく描かれているように見える。

この違いに目を付けた心理学者らが,15世紀から20世紀にかけて描かれたポートレートと自画像を掻き集めて,そこに描かれている頭のサイズをしらみつぶしに調べてみた。下のグラフがその結果。

青の点がポートレートで,赤の点が自画像。全体的に赤の方が上に偏っているのが分かると思う。

また,この心理学者らは,生徒を集めて自分と他人の頭のサイズを推測させるという実験を行った。その結果,自分の頭のサイズを推測する場合だけ,実際のサイズよりも30%から42%も過大評価していることが分かった。

ちなみに,手のサイズで同様の実験を行った場合は,どちらかと言えば過小評価する傾向が見られたという。おそらく,「過大評価現象」は頭の場合に限定されるものなんだろう。

ではなぜ,自分の頭のサイズを過大に認識してしまうんだろう? 単に鏡像と視点の位置関係が生み出す錯覚と片付けることもできるけれど,人間はとかく自己の認識に歪みを生み出しがちなものだから,何か背後に心理学的な効果が働いている可能性も,無きにしもあらず。

ともかく,ひとつ確実に言えるのは,いわゆる「小顔願望」などは,こういった錯覚によってブーストされているんだろうということ。もし小顔に憧れているひとがいたら,こんな薀蓄話を気休めにしてみるのはいかが……。