KAOSSILATOR PRO

KORG - KAOSSILATOR PRO Dynamic Phrase Synthesizer/Loop Recorder

実際にこのシンセを使ってみて分かったのは,恐らく,このシンセを使いこなすには3つの段階が存在するだろう,ということ。

一つ目は,単に音を出してみるという段階。「パッドを押せば音が出る」ということは誰でもすぐ理解することができる。その後に,ドラムやループフレーズやSEのように,様々なカテゴリーが存在していて,それぞれ少し違う勝手で音が出るということを理解できればいいと思う。

二つ目は,ループ録音の使い方を知るという段階。パッドの下にあるループトラックボタンを押しながらパッドを押すと録音が開始される。その上に次々と音を重ね録りしていって,複数のパートから構成される合奏を作り出す。これも操作は直感的だから,理解するのにそれほど時間はかからないと思う。

そして三つ目の段階は,これらの機能を組み合わせて曲の展開を作り出すということ。この段階が最も奥が深く,また面白味も深いと思う。

4つのループトラックに対して計画的に音を積み重ねていけば,特定のトラックをミュートすることによって展開を作り出すことができるようになる。例えば上の動画では,トラックAには「スネア以外のリズムパート」,トラックBには「スネア類」,トラックCには「ベースパート」,トラックDには「シンセパート」といった感じで住み分けを行っている。こうすれば,例えば「トラックAを抜いてリズムを弱める展開」とか,「トラックDを抜いて沈んた雰囲気の展開」とか,「トラックB・Cだけを残してベースのビヨビヨ感を強調する展開」とか,「トラックB以外を抜いてギュッと締める展開」とか,様々な展開を作り出すことができる。

また,録音の部分イレースも,展開を作り出すには重要な機能だ。上の動画でも,最初トラックDでは長いシンセパッドを録音しておいて,途中で部分イレースを使って半テンポの拍を作り出すようにしている。操作としては部分的に音を削っているだけなのだけれど,聴く側としては場面が切り替わったような印象が与えられる。また,その後にトラックCでも部分イレースを行って,ベースのフレーズに変化を与えている。これも削っただけなのにフレーズが変化したように聴こえる面白い効果だ。

KAOSSPAD KP3を使っていた頃にも感じたことなのだけれど,こういった「たった4トラックでできる展開の工夫」に凝ってみるのも,なかなか面白い。DJの人たちも,ふたつのターンテーブルとフェーダーの操作だけで様々な展開を作り出すでしょ?それに近い面白さがあるのかなと思う。