美しいワープロ - Ommwriter
画面上に幾つも開かれたウィンドウは，複数の作業の同時進行を可能にするが，それらの作業を切り替える度に，人の思考の流れは中断されている。ウェブやメール，メッセンジャー等のテクノロジーは，コミュニケーションの形を様変わりさせたが，それが集中の妨げになっていることは，それを利用する誰もが自ずから認識しているはずだ。
今後もコンピューターの上で，インターネットの上で，様々なテクノロジーが生まれていくことだろう。果たしてそれらのテクノロジーも，人の集中力を奪い続けることになるのだろうか。
Ommwriter は，その反証となるべく製作されたワードプロセッサーだ。「人の集中力を高めるためにテクノロジーを使うことはできないだろうか？」という問いに対する答えが，このアプリには込められている。
Ommwriter はフルスクリーン専用アプリであり，起動すると画面全体を覆い尽くすように表示される。ユーザーは，このアプリを立ち上げている間，文章を書くことしかできない。 Ommwriter の設定には，フォント切り替え等の文章に直接関係のある項目以外に，背景の切り替え，ＢＧＭの切り替え，打鍵音の切り替え等の項目が用意されている。どれも「文章を書く体験を快適なものにする」という目的のために用意されているものだ。
Ommwiter は日本語にも対応している。残念ながら日本語入力中に打鍵音が出ないという些細な不具合があるが，それ以外は問題無く使えるようだ。
文章を書く以外の行為を封じられたうえで，独特のビジュアルとアンビエントミュージックに包まれ，ただ文章を書く行為に没頭する。シンプルなことだけれども，これはなかなか新鮮な体験かもしれない。「文章を書く」という行為を，紙とペンのレベルにまで一旦落としてから，そこにテクノロジーのエッセンスを軽く添えた……そんな感触が，ここにはあると思う。
もし Mac を所有していて，このコンセプトに興味を持ったなら，ぜひ一度使ってみて欲しい。この文章も Ommwriter を使って書いた。また機会があれば使ってみたいと思っている。
