Ableton が Live の新機能実装の一時停止を表明

Ableton 社の CEO である Gerhard Behles は,CTO の Bernd Roggendorf と連名で,Live の新機能実装の一時停止を表明する記事を,同製品のサポートフォーラムに投稿した。投稿した記事では,Live 8 において既知のバグが数カ月間放置されていることや,イノベーションよりも品質を重視するはずの同社の姿勢が最近疎かになっていたことなどを詫びたうえで,以下の2つの宣言を行った。

  • 全ての新機能の開発を停止し,開発チーム全体を不具合の対応に合流させる。この措置は無期限であり,結果は Live 8 の無料アップデートに反映されるものとする。
  • 同様の問題が将来発生しないようにプロセスの改善を行う。

このような表明が行われることは,音楽ソフトにおいてはもちろんのこと,ソフトウェア一般で捉えても珍しいことだと思う。音楽関係のブログやフォーラムを見る限りでは,この動きは概ね好意的に受け取られている(参考:CDM, Synthtopia)。

個人的には Ableton Live は非常に安定したソフトという印象があるが,機能追加の度に不安定性が高まってきているという意見は少なくない。特に最新バージョンの Live 8.1 は不安定であり,ライブパフォーマンスにおいては過去のバージョンを使用しているという書き込みも見られた。

Max for Live 等の野心的なプロジェクトを実現させてきた Ableton が,ここで一旦歩みを止め,品質について顧みる冷静さを持っていることは,率直に素晴らしいと思う。また,これが単に「たまたま発生した問題」ではなく,開発プロセス的に問題があると認識したことも重要な判断だと思う。

この措置によって,Live 8 の新機能であったはずのシェアリング(リモートコラボレーション)のリリースが更に遠のくことが予想されるが,それよりも品質の維持の方が大切であることは明らかだ。いちユーザーとして,また,ソフトウェア開発者の端くれとして,今回の決断をポジティブに受け入れたい。