月面探査の未来と過去


先日の The Big Picture のテーマは「月面探査の未来と過去」。2020年の探査再開に向けて進められている試験の様子と,40年前に達成された業績とを,併せて紹介している。上の写真は,ワシントン州はモーゼス湖のほとりで行われている月面探査車の稼動試験の様子を収めたもの。宇宙服もちゃんと新しいやつを着ているね。

冷戦下の60年代ならともかく,21世紀になって再び人間を月面に送り込むなんて,なかば夢物語のように思っていたのだけれど,こうして実際に試験が着々と進められている様子を見ると,本当やろうとしているんだという「本気」が伝わってきて,少し驚きを覚える。

これらの写真を見ていて思い出したのだけれど,月面探査の一連のプロセスの中でも最も難しい瞬間は,月面から離陸するときにある,という話があった。

The Moon Disaster That Never Happened - Mental Floss

もし何かの手違いが生じて離陸に失敗した場合,あるいは,離陸できないことが判明した場合,その時点で着陸船にいる宇宙飛行士が地球へと帰還する望みは,完全に絶たれる。そうなったら,どうする?

実は,そうなった場合のシナリオというのも,ちゃんと用意されていた。まず,離陸できないと分かったら,月着陸船との間の通信を遮断する。大統領は未亡人となる宇宙飛行士の妻に電話で悔やみの言葉を伝えたあと,聖職者を呼び海軍葬と同じ様式で葬礼を行う。その際のスピーチの原稿も用意されていた。

ちなみに,葬礼は行っているものの,通信を遮断してしまっているから,その時点で二人が本当に死んでいるかどうかは分からない。恐らくは自殺しているか,あるいは窒息しているか,どちらかだろう。残酷な話だけれど,本当の本当にまったく助けようが無いのだから,しょうがないということなのだろうと思う。

そんなこんなで,とっても危険で容赦無い月面探査。そのリスクとコストがあったとしても人間を送り込みたいというのは,やはり人間を送り込むことで初めて可能になることが,よほど多くあるからなんだろうと思う。遠隔操作のロボットで何でもかんでも調べられるようになれば,色々な苦労をせずに済むのだろうけどね。