史料にみる見積もり術


史料にみる日本の近代 - 昭和十九年度物資動員計画改訂大綱
いつの時代のどこの世界でも,無理な予算と期日で特定の目標を達成することが求められるプロジェクトというのは存在するもの。そんなプロジェクトの当事者になったとき,そっと見返すのが,この史料。戦況の苦しさが増してくる昭和19年,自分のおじいちゃんの世代の人々が,国家を懸けたプロジェクトにおいて,無理だとは分かっていても立てなければならなかった見積もりの記録。

史料に目を通してみると,例えば,21万トンのアルミニウムを内地で作るのに,243万トンもの海上輸送能力が必要とされていたことが分かる。でも,この頃のシーレーンの確保状況はどんどん危うくなってきていて,肝心の運送能力を担う船舶群はどんどん沈められていってしまう。結局,昭和19年に生産できたアルミニウムは11万トンとのことで……半分は到達できているから,まだマシな方なのか。

そんなことに思いを巡らせていると,自分の立てている見積もりなんてだいぶ楽な方だ,と,少し気分が軽くなる。まあ,やっちゃいけない類の心の安らぎだけど。