お金のことを忘れるべきとき

Expensive advice more likely to be followed - Mind Hacks

同じ品質のワインでも,高い値段を付けられている方が美味しく感じる,なんて話がある。これと似た話で,同じ品質のアドバイスでも,タダのと有料のとでは,有料の方が従いたくなってしまう,という話がある。

これはある組織行動論の研究者が行った実験。適当にボランティアを集めて,アメリカの歴史に関する年号当てクイズに答えてもらう。被験者は正答率に応じてちょっとした(数千円ぐらいの)賞金が貰える。1セッションは15問から構成されていて,これを4セッション繰り返す。

ただし,4セッションのうち,ある1つのセッションでは,他人の回答を「アドバイス」としてタダで教えてもらうことができる。また,別のもう1つのセッションでは,他人の回答を有料で教えてもらうことができる。ちなみに被験者には,その「アドバイス」が他人の回答からランダムに選んできたものであることを告げてある。つまり被験者は,タダでも有料でも「アドバイス」の品質に差は無いということを知っているわけ。

すると結果は,タダのときよりも有料のときの方が,「アドバイス」を参考にして答える割合が高かったという。

なぜ被験者は,アドバイスの品質に差が無いと知っていながら,有料のアドバイスの方を多く信頼したんだろう? 最初に触れたワインの話は,品質が同じであるという事実を隠した上での実験だから,「値段に騙された」のだと解釈できる。でもこの話は「騙された」わけじゃないよね。

実験を行った研究者は,これを埋没費用の誤謬と結びつけて考えている。人々は埋没費用に引きずられて不合理な判断を行うことがある。「せっかくお金を払ったのだから,使わなきゃもったいない」という心理が働いてしまうんだね。でも実際には,費用を投入したという事実と,アドバイスの正しさの間には何の関係性もない。そのことを意識して行動するのはよっぽど難しいということを,この実験結果は表しているんだ。